「袈裟かけ一本杉」 

 千坊尾根にある土佐街道沿いの寂しい共同墓地跡に杉の木がある。
 ある時旅の坊さんが夜中にそこを通ると言ったので、
 「あそこには恐いモノが出るから泊まってお行き」
 と忠告したが、
 「出たらワシが退治してやる」
  と、そこへ向かった。
 あくる朝、心配になった村人が見に行くと道端の一本杉の梢に坊さんの袈裟がかかっているだけで
坊さんの姿が見えない。
 「天狗にやられたんじゃ」
 と村人は恐れた。今も残るその杉の近くにはこの時いらい地蔵さんが祀られた。